AWS Direct Connect — 専用線接続の基礎と設計
AWS Direct Connect の仕組み、物理構成、仮想インターフェイス、冗長化設計を SAA 基礎から SAP 高度設計まで段階的に解説。専用線によるハイブリッドクラウド接続を網羅。
AWS Direct Connect(DX)は、オンプレミス環境と AWS を 専用のプライベートネットワーク接続 で結ぶサービスです。 本記事では SAA(基礎概念) と SAP(高度な設計シナリオ) の両面から、 Direct Connect の仕組みと実践的なハイブリッド接続設計を整理します。
SAA レベル:基礎概念
Direct Connect とは何か
Direct Connect はインターネットを経由せず、AWS Direct Connect ロケーション(拠点)を介して オンプレミスのネットワークと AWS を直接接続する 1 Gbps / 10 Gbps / 100 Gbps の専用回線です。
- プライベート接続: インターネットを通らないため、帯域幅が安定し遅延が低い
- 予測可能なコスト: データ転送量に応じた従量課金ではなく、ポート時間課金が基本
- VPC へのプライベートアクセス: パブリック IP を経由せず VPC のプライベートサブネットへ到達可能
SAA 試験のポイント
Direct Connect の最大の特徴は 「インターネットを経由しないプライベート接続」 です。 VPN と違い、帯域がインターネットの混雑の影響を受けず、一貫した低レイテンシを実現します。 SAA では「VPN と DX の違い」が頻出します。
物理構成の理解
Direct Connect は物理的に複数の要素で構成されます。
[オンプレミスデータセンター]
│
│ お客様の回線 (Last Mile)
▼
[DX ロケーション (APNパートナーの施設)]
│
│ クロスコネクト (Cross Connect)
▼
[AWS Direct Connect エンドポイント]
│
▼
[AWS リージョン (VPC)]
| 構成要素 | 説明 |
|---|---|
| DX ロケーション | AWS との接続ポイントとなるパートナーデータセンター |
| クロスコネクト | DX ロケーション内でのお客様回線と AWS 側ポートの物理接続 |
| DX エンドポイント | AWS 側の論理接続端点 |
| 仮想インターフェイス (VIF) | 論理的な接続設定(private / public / transit) |
仮想インターフェイス (VIF) の種類
Direct Connect は 1 本の物理回線上に複数の仮想インターフェイス を作成できます。 これが SAA で重要なポイントです。
SAA レベル:基礎概念
Direct Connect には 3 種類の仮想インターフェイス があります。 それぞれの対象範囲を正確に押さえることが SAA の前提知識です。
| VIF 種別 | 接続先 | 代表ユースケース |
|---|---|---|
| Private VIF | 単一 VPC の仮想プライベートゲートウェイ (VGW) または Direct Connect ゲートウェイ | VPC プライベートサブネットへのアクセス |
| Public VIF | AWS パブリックサービス (S3, DynamoDB 等) | インターネット経由せず AWS パブリック API へ |
| Transit VIF | Direct Connect ゲートウェイ経由で Transit Gateway | 複数 VPC へのアグリゲーション接続 |
データ転送コストの挙動
Direct Connect のコストモデルは VPN と異なります。
- ポート料金: 物理ポートの時間従量(1Gbps / 10Gbps / 100Gbps)
- データ転送料金: DX ロケーションから AWS への方向 (Out) が安価
- AWS → オンプレミス方向: リージョンから DX ロケーションへの転送に別途課金
SAA 頻出
AWS → オンプレミス方向のデータ転送は、インターネット経由のデータ転送より安価 です。 大容量の定常データ移行やバックアップトラフィックでは DX がコスト上有利になります。
SAP レベル:高度な設計シナリオ
SAP では「単一回線の構成」ではなく、冗長化・マルチリージョン・SLA 設計 が問われます。 実環境では 1 本の DX 回線では単一障害点 (SPOF) になるため、必ず冗長構成を取ります。
Direct Connect の冗長化パターン
SAP レベル:高度な設計シナリオ
Direct Connect の SLA は 99.99% を目標に設計します。 これを実現するには 2 本の DX 回線を異なるロケーションに配置 し、 BGP でマルチパスを構成するのが SAP の定石です。
[オンプレミス]
│ │
DX-Primary DX-Secondary
(ロケーション A) (ロケーション B)
│ │
└────────┬───────────┘
▼
[AWS リージョン]
冗長化のキーポイント:
- 異なる DX ロケーション を使用(ロケーション障害を回避)
- 異なるルーター / 機材 を使用(機材障害を回避)
- BGP マルチパス (Multipath) を有効化(AS-PATH 等の条件を合わせる)
- ASN (Autonomous System Number) を分離(プライベート ASN 65000〜65535 を利用)
BGP による経路制御
Direct Connect は BGP を用いてルーティングを交換します。 SAP では AS-PATH Prepending や Local Preference でトラフィックを意図的に偏らせる設計が問われます。
# プライマリ経路を優先させる設定イメージ
プライマリ DX: AS-PATH = [65010]
セカンダリ DX: AS-PATH = [65020 65020 65020] ← Prepend で劣後化
| 制御手法 | 効果 | 使用場面 |
|---|---|---|
| AS-PATH Prepending | 経路を意図的に長く見せ劣後化 | AWS → オンプレミス方向の優先制御 |
| Local Preference | AS 内で優先度を設定 | オンプレミス → AWS 方向の優先制御 |
| BGP Community タグ | AWS 側へ経路制御を指示 | リージョン間の経路調整 |
BGP Community の活用
AWS は特定の BGP Community 値を認識し、経路の ローカル/グローバル優先度 を切り替えます。
例: 64600:7100 は経路をリージョン内に制限。これを利用した経路設計が SAP の論点です。
Direct Connect Gateway によるマルチリージョン/VPC 接続
Private VIF は通常 1 つの VGW (仮想プライベートゲートウェイ) にしか紐付できません。 これでは複数 VPC / 複数リージョンに接続する際に回線を複数本引く必要があります。
Direct Connect Gateway (DXGW) を使うと、1 本の Private/Transit VIF を複数 VPC に接続できます。
[オンプレミス]
│
DX 回線 (1本)
│
▼
[DX Gateway] ── VGW-VPC-A (リージョン 1)
└── VGW-VPC-B (リージョン 2)
- DXGW は グローバルリソース(任意のリージョンの VPC に接続可能)
- 1 つの DXGW に複数の Private VIF / Transit VIF を関連付け可能
- VGW と Transit Gateway の 混在接続 もサポート
MACsec (IEEE 802.1AE) によるレイヤ 2 暗号化
セキュリティ要件が厳格な場合は、MACsec によるリンク層暗号化を有効化します。
MACsec の特徴
MACsec は DX ロケーションまでの物理区間 を暗号化します。 DX ロケーションから AWS 内部までは AWS 側の保護区間として扱われます。 エンドツーエンド暗号化ではない点に注意しましょう。
CloudWatch メトリクスによる監視
Direct Connect の稼働監視は CloudWatch で行います。SAP では以下のメトリクスを必ず監視対象に入れます。
| メトリクス | 意味 | 設計論点 |
|---|---|---|
ConnectionState | 1=Up, 0=Down | 回線断の即時検知 |
ConnectionBpsEgress/Ingress | ビットレート | 帯域枯渇の予兆検知 |
ConnectionPpsEgress/Ingress | パケットレート | 小パケット大量転送の監視 |
ConnectionCRCErrors | CRC エラー | 物理層の品質劣化検知 |
監視設計のコツ
ConnectionCRCErrors の上昇は 物理層の品質悪化 を示唆します。
回線断になる前に回線業者へエスカレーションできるアラーム設計が SAP の実務論点です。
VPN との比較と選択基準
| 項目 | Direct Connect | Site-to-Site VPN |
|---|---|---|
| 接続方式 | 専用線 | IPsec over インターネット |
| 帯域 | 1/10/100 Gbps 固定 | 最大 1.4 Gbps (トンネル) |
| レイテンシ | 低・安定 | インターネット依存 |
| セットアップ | 数週間 (物理工事) | 数分〜 |
| コスト | 高いが定常大量転送に有利 | 低いが従量 |
まとめ
- SAA: DX はインターネットを経由しない専用線、3 種類の VIF (private/public/transit)、 VPN との違いを理解する。
- SAP: 冗長化設計(異ロケーション 2 本 + BGP)、DXGW によるマルチリージョン/VPC 集約、 MACsec、CloudWatch 監視を設計できることが求められる。
次は Direct Connect Gateway と Transit Gateway の連携 で、マルチ VPC 環境の接続設計を深掘りします。