移行期間中のハイブリッド接続設計
移行中の一時的な二重稼働環境構築、帯域確保の設計を解説します。
移行プロジェクトは一瞬で完了するものではなく、多くの場合、数週間〜数ヶ月にわたって オンプレミスとAWSが**同時に稼働する「ハイブリッド期間」**を経ます。本記事では、 この期間に特有のネットワーク設計を解説します。
SAA レベル:基礎概念
ハイブリッド期間が発生する理由
- 大規模なシステムを一度にすべて移行することはリスクが高いため、段階的な移行(移行波)が一般的
- 移行波ごとに、一部はAWS、一部はオンプレミスという状態がプロジェクト期間中継続する
SAA 試験のポイント
ハイブリッド期間中、オンプレミスとAWS間の通信には、Direct ConnectまたはSite-to-Site VPN(1-1で解説)が必要です。移行プロジェクトの計画段階から、この接続の帯域と可用性を十分に考慮する必要がある、という基本認識がSAAで問われます。
SAP レベル:高度な設計シナリオ
移行トラフィックと業務トラフィックの帯域競合
SAP 試験のポイント
移行期間中は、通常の業務トラフィック(オンプレミス↔AWS間のアプリケーション通信)に加えて、DMSやDataSyncによる大量のデータ移行トラフィックが同じ接続を流れます。SAPレベルでは、この2種類のトラフィックが帯域を奪い合い、業務に影響を与えないよう、QoS(帯域制御)や、移行専用の別回線・別VIFを用意する設計が問われます。
二重稼働環境における名前解決とルーティング
SAP 試験のポイント
移行波の一部だけがAWSに移行した状態では、同じアプリケーション名でも、参照先がオンプレミスかAWSかを動的に切り替える必要がある場合があります。SAPレベルでは、Route 53 Resolver(1-1で解説)を使ったハイブリッドDNS設計により、移行済みのサービスはAWS側のエンドポイントへ、未移行のサービスはオンプレミス側へ、という名前解決レベルでの透過的なルーティングが問われます。
設計上の落とし穴
「移行が完了するまでは、既存のオンプレミスのネットワーク設定をそのまま使えばよい」という判断は、移行波が進むにつれて生じる複雑な相互依存関係の管理漏れを招きます。SAPレベルでは、移行の各フェーズごとに、どのサービスがどこに存在し、どう通信するかを明示的に文書化・管理する移行期間中のネットワークトポロジー管理が重要な論点として問われます。
帯域確保の事前計画
- Application Discovery Service(4-1で解説)で収集した既存のネットワークトラフィック量のデータを基に、移行トラフィックのピーク時の必要帯域を試算し、Direct Connectの帯域(1G/10G/100G)や複数回線の要否を事前に計画する
- 移行完了後は、ハイブリッド期間専用に確保した帯域を縮小・解約するなど、コスト最適化も視野に入れる
まとめ
- SAA: ハイブリッド期間中の接続手段(Direct Connect/VPN)の必要性を理解する。
- SAP: 移行トラフィックと業務トラフィックの帯域分離設計、ハイブリッドDNSによる透過的なルーティング、帯域の事前計画ができる。
次は 移行時のデータ整合性・切り戻し戦略を見ていきましょう。