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TCO評価と移行優先順位付け — AWS Migration Evaluator

移行前後のコスト比較と、移行順序決定のためのビジネス影響評価を解説します。

最終更新: 2026-07-28 カテゴリ: 移行計画の策定

移行プロジェクトの経営層への説明や予算確保には、「移行することでどれだけコストが 変わるのか」を定量的に示す必要があります。本記事ではAWS Migration Evaluator (旧TSO Logic)と、移行優先順位の決定方法を解説します。

SAA レベル:基礎概念

Migration Evaluatorの基本

  • オンプレミス環境の実際の使用率データ(Application Discovery Service等から収集)に基づき、AWS移行後の推定コストを試算するツール
  • 「今と同じ性能を維持した場合、AWSでのインフラコストはどう変化するか」というTCO(総所有コスト)比較レポートを生成する

SAA 試験のポイント

TCO試算は、単純なサーバースペックの比較だけでなく、オンプレミスのハードウェア減価償却費、データセンターの運用費(電気代、人件費)なども含めた総合的なコスト比較を行う点が特徴です。表面的なインスタンス料金だけの比較ではない、という理解がSAAで問われます。

SAP レベル:高度な設計シナリオ

実際の使用率データに基づく適正サイジング

SAP 試験のポイント

オンプレミスでは、ピーク時に耐えられるよう過剰にプロビジョニングされたサーバーが多く存在します(実際の平均CPU使用率が10%程度ということも珍しくありません)。Migration Evaluatorは、実際の使用率データに基づいて、AWS移行後に適正なインスタンスサイズを推奨します。SAPレベルでは、単純に「オンプレミスと同じスペックのインスタンスを選ぶ」のではなく、実データに基づくライトサイジングによって、移行と同時にコスト最適化を実現するアプローチが問われます。

オンプレミスサーバー: 32vCPU / 128GB RAM(スペック上のフル構成) │ 実際の平均使用率: CPU 15%、メモリ 30% │ Migration Evaluatorによる分析 AWS移行後の推奨: 8vCPU / 32GB RAM インスタンス(実使用率に基づく適正サイズ)

移行優先順位決定のためのビジネス影響評価

SAP 試験のポイント

どのワークロードから移行に着手すべきかは、技術的な移行難易度だけでなく、ビジネスへの影響度とリスクの両軸で評価する必要があります。SAPレベルでは、「移行が容易でビジネスリスクが低いワークロード」から着手して初期の成功体験と学びを得て、その後「移行難易度は高いがビジネス価値の大きいワークロード」に着手する、というリスクベースの優先順位付けが問われます。

象限移行難易度ビジネス影響推奨アプローチ
第1優先低い低い初期のクイックウィンとして早期着手
第2優先低い高い慎重に計画しつつ早めに着手
第3優先高い低い後回しにしても影響が小さい
要検討高い高い十分な計画とパイロット検証を経て着手

設計上の落とし穴

「最もコスト削減効果が大きいワークロードから着手すべき」という単純な経済合理性だけの判断は、SAPレベルでは不十分とされることがあります。組織の移行スキル成熟度や、初期の失敗が全体プロジェクトの信頼性に与える影響も考慮し、まずは低リスクな案件で経験を積んでから難易度の高い案件に着手する、という現実的なプロジェクトマネジメントの視点が問われます。

継続的なTCO再評価

  • 移行完了後も、実際のAWS利用状況とMigration Evaluatorの試算結果を比較し、乖離があれば原因を分析する(サイジングの見直し、購入オプションの最適化等、ドメイン3の継続的改善とも接続する)ことが、移行プロジェクトを真に成功させる最後のステップとなる

まとめ

  • SAA: TCO試算がオンプレミスの総合コストとAWSコストを比較するものであることを理解する。
  • SAP: 実使用率に基づく適正サイジング、ビジネス影響度と移行難易度を軸にした優先順位付けができる。

ここまでで 4-1 移行計画の策定 の全3記事が完了しました。次は 4-2 サーバー・データ移行 に進みます。