VPC Peering vs Transit Gateway vs PrivateLink 比較
VPC Peering、Transit Gateway、PrivateLink の 3 つの AWS 接続手法を特徴・コスト・制約・ユースケースで比較。SAA 基礎から SAP の使い分け設計まで解説。
AWS で VPC 間やサービス間を接続する代表的な手法として、 VPC Peering、Transit Gateway (TGW)、PrivateLink の 3 つがあります。 それぞれ得意・不得意があり、使い分け がアーキテクチャ設計の鍵になります。 本記事では 3 者を多角的に比較し、SAA / SAP 両面で判断基準を整理します。
SAA レベル:基礎概念
3 つの接続手法の位置づけ
| 手法 | 性質 | 主な接続対象 | 課金モデル |
|---|---|---|---|
| VPC Peering | VPC 間の 1 対 1 直接接続 | VPC ↔ VPC | 接続 + データ転送 |
| Transit Gateway | ハブアンドスポーク の集約ハブ | VPC, VPN, DX, TGW | アタッチメント + データ転送 |
| PrivateLink | サービス単位のプライベート公開 | サービス ↔ 消費者 VPC | エンドポイント + データ転送 |
SAA レベル:基礎概念
3 つの本質を一言で:
- VPC Peering = 「VPC 同士の直接つなぐ」
- Transit Gateway = 「ネットワークの中央ハブ」
- PrivateLink = 「サービスをプライベートに公開」 この違いが SAA で最も問われる本質です。
VPC Peering の特徴
VPC Peering は 2 つの VPC を プライベート IP で直接接続 します。
- 推移的ではない: A-B, B-C があっても A-C は自動接続されない
- CIDR 重複不可: 両 VPC の CIDR が重なるとピアリング不可
- リージョン間対応: 別リージョン VPC とのピアリング可能(Inter-Region VPC Peering)
- トランジットゲートウェイ経由不可: Peering に TGW を介在させられない
VPC-A ──peering── VPC-B ← 直接接続
VPC-B ──peering── VPC-C ← 直接接続
VPC-A ────────── VPC-C ← 通信不可(推移的でない)
SAA 試験のポイント
VPC Peering は 「推移的でない (Non-Transitive)」 という制約が SAA の超頻出です。 「A と B、B と C がピア接続されていても、A と C は通信できない」を覚えましょう。
Transit Gateway の特徴
TGW は 中央ハブ に複数 VPC を集約し、推移的な接続を実現します。
- 推移的: A→TGW→B, A→TGW→C が可能(ハブ経由で任意の VPC 間通信)
- VPN/DX も集約可能: ネットワーク接続全体を一元化
- CIDR 重複の管理: ルートテーブルで経路制御可能(重複自体はNG)
- TGW Peering でリージョン間接続: 別リージョン TGW とピアリング
PrivateLink の特徴
PrivateLink は 特定のサービスをプライベートに公開 します。
- サービス単位: VPC 全体ではなく、特定の NLB / エンドポイントサービスを公開
- CIDR 重複OK: 消費者側 VPC と提供者側 VPC の CIDR が重複しても可
- インターネット不使用: プライベート IP でサービスに到達
- 消費者から提供者への方向のみ: 片方向(サービス提供側へのアクセス)
SAA 頻出
PrivateLink は CIDR 重複を許容 する数少ない接続手法です。 「統合先 VPC と自 VPC が CIDR 重複している」というシナリオでは、 PrivateLink が正解になることが多いです。
SAP レベル:高度な設計シナリオ
使い分けの判断マトリクス
SAP では「どの手法をどのシナリオで選ぶか」の 判断基準 が問われます。
SAP レベル:高度な設計シナリオ
3 つの使い分けは 「接続の粒度」「推移性の要否」「CIDR 重複の有無」「コスト」 の 4 軸で判断します。 以下のマトリクスを参考に、実シナリオに最適な手法を選ぶ能力が SAP に求められます。
| シナリオ | 推奨手法 | 理由 |
|---|---|---|
| 2 つの VPC の単純接続 | VPC Peering | 最もシンプル・低コスト |
| 3 つ以上の VPC の相互接続 | Transit Gateway | 組み合わせ爆発を回避 |
| CIDR 重複のある VPC 接続 | PrivateLink | Peering/TGW は不可 |
| SaaS を顧客 VPC に提供 | PrivateLink | サービス単位で安全に公開 |
| オンプレミス + 複数 VPC | Transit Gateway | VPN/DX を含む集約 |
| ハブ VPC 経由の全 VPC 接続 | Transit Gateway | 推移的接続が必要 |
コスト比較
| 手法 | 接続コスト | データ転送 | 備考 |
|---|---|---|---|
| VPC Peering | 接続あたり低 | 同リージョン安価 | 最も低コスト |
| Transit Gateway | アタッチメント時間課金 | TGW 経由で課金 | 大規模で有利 |
| PrivateLink | エンドポイント時間課金 | 処理データ量課金 | サービス公開向け |
コスト誤解の典型
「TGW の方が常に安い」は誤り です。少数 VPC の接続では VPC Peering の方が アタッチメント料金がかからず安価です。TGW がコスト有利になるのは 一定規模以上 からです。 SAP ではこの閾値判断が問われます。
推移性とトランジットの設計
「推移的接続」が必要かどうかが手法選択の重要分岐点です。
# 推移的接続が必要なケース(TGW 一択)
Hub-VPC ─ TGW ─ Spoke-A
─ Spoke-B
─ Spoke-C
→ Spoke-A から Spoke-B へも Hub 経由で通信したい
# 単純 1 対 1 のケース(VPC Peering で十分)
VPC-A ─ VPC-B
→ 推移性不要、Peering で最小コスト
トランジットの落とし穴
VPC Peering をハブアンドスポークの代わりに使うことはできません。 中央 VPC をハブにして Peering を張っても、推移的でないため Spoke 間通信は不可。 この制約から TGW が生まれたと言っても過言ではありません。
CIDR 重複シナリオの解決
M&A や統合で CIDR が重複した VPC 同士を接続 する必要がある場合、 Peering も TGW も使えません(経路が衝突するため)。
この場合、PrivateLink でサービス単位の接続にするか、 CIDR の再設計(移行) が必要になります。
| シナリオ | 選択肢 | 理由 |
|---|---|---|
| 特定サービスだけ接続できればよい | PrivateLink | CIDR 重複を許容 |
| ネットワーク全体を統合したい | CIDR 再設計 | 根本的解決が必要 |
| 一時的な統合期間 | PrivateLink で橋渡し | 移行中の暫定対応 |
M&A 統合の定石
M&A で社内ネットワーク統合する際、まず PrivateLink で必要サービスだけ接続 し、 並行して CIDR 再設計を進める 段階的移行 が SAP の実務定石です。 一気に TGW 統合しようとすると CIDR 衝突で停止リスクが高まります。
PrivateLink のアーキテクチャ詳細
PrivateLink の構成は「サービス提供者」と「消費者」に分かれます。
[消費者 VPC]
└── Interface Endpoint (ENI)
│ (プライベート IP)
▼
[AWS PrivateLink]
│
[NLB] (サービス提供者 VPC)
│
[提供者アプリケーション]
- Interface Endpoint: 消費者 VPC に ENI が作られ、プライベート IP でサービスに到達
- Gateway Load Balancer Endpoint: セキュリティアプライアンス向けの特殊エンドポイント
- Gateway Endpoint: S3/DynamoDB 専用(ルートテーブルベース、無料)
SAP レベル:高度な設計シナリオ
SAP では 「Interface Endpoint と Gateway Endpoint の違い」 が問われます。
- Gateway Endpoint = S3/DynamoDB 専用、無料、ルートテーブル制御
- Interface Endpoint = 汎用、有料、ENI ベース この違いを押さえ、コスト最適なエンドポイントを選ぶ能力が求められます。
ハイブリッド構成の実例
実務では 複数手法を組み合わせる のが普通です。
[オンプレミス]
│ (DX Transit VIF)
▼
[TGW] ── VPC-A (本番アプリ)
│ └── VPC-B (本番DB)
│
├── PrivateLink ── SaaS プロバイダ VPC (CIDR 重複)
│
└── VPC Peering ── VPC-Shared (少数の共有サービス)
ハイブリッド設計の要点
- メインのネットワーク統合 = TGW
- CIDR 重複の外部サービス = PrivateLink
- 単純 1 対 1 で低コストに済ませたい = VPC Peering のように、用途に応じて使い分ける のが SAP の実務姿勢です。
比較まとめ表
| 項目 | VPC Peering | Transit Gateway | PrivateLink |
|---|---|---|---|
| 接続単位 | VPC 間 | ネットワーク全体 | サービス単位 |
| 推移性 | なし | あり(ハブ経由) | 片方向 |
| CIDR 重複 | 不可 | 不可 | 可 |
| リージョン間 | 可能 (Inter-Region) | TGW Peering で可能 | 可能 |
| オンプレミス統合 | 不可 | VPN/DX 集約可 | 不可 |
| コスト | 最低 | 中〜大規模で有利 | サービス公開向け |
| 管理複雑さ | 単純 | 中程度 | 単純 |
まとめ
- SAA: 3 つの本質(Peering=直接, TGW=ハブ, PrivateLink=サービス公開)と、 Peering が「推移的でない」点を理解する。
- SAP: 使い分けの判断マトリクス、CIDR 重複時の PrivateLink 活用、 コスト閾値、ハイブリッド構成の設計が求められる。
次は AWS PrivateLink の単体記事で、エンドポイント設計をさらに深掘りします。