Direct Connect Gateway と Transit Gateway の連携
Direct Connect Gateway と Transit Gateway を組み合わせたマルチ VPC / マルチリージョン接続アーキテクチャを解説。Transit VIF、ASN 設計、経路制御の設計論点を SAA から SAP まで網羅。
1 本の Direct Connect 回線で複数 VPC に接続するには、Direct Connect Gateway (DXGW) が鍵となります。 さらに Transit Gateway (TGW) と連携させることで、数百 VPC 規模のハイブリッドネットワークを構築できます。 本記事では DXGW と TGW の連携設計を SAA / SAP 両面から整理します。
SAA レベル:基礎概念
Direct Connect Gateway の役割
Private VIF は 1 つの VGW にしか紐付けられない という制約があります。 複数 VPC に接続したい場合、VPC ごとに DX 回線を引くのは非現実的です。
DXGW はこの制約を解消する グローバルリソース で、1 本の DX 回線上の Private VIF / Transit VIF を 複数 VPC(VGW または TGW) に紐付けできます。
SAA レベル:基礎概念
DXGW は 「Direct Connect 回線を複数 VPC で共有するためのハブ」 です。 グローバルリソースなので、異なるリージョンの VPC にも接続できます。 これにより「リージョンごとに専用線を引く」という無駄をなくせます。
[オンプレミス]
│
DX 回線 (1本)
│
▼
[DX Gateway (グローバル)]
│
├── Private VIF ── VGW ── VPC-A (リージョン 1)
├── Private VIF ── VGW ── VPC-B (リージョン 1)
└── Transit VIF ── TGW ── VPC-C, VPC-D (リージョン 2)
Private VIF vs Transit VIF
DXGW に紐付く仮想インターフェイスには 2 種類あります。
| VIF 種別 | 紐付先 | ユースケース |
|---|---|---|
| Private VIF | VGW (仮想プライベートゲートウェイ) | 単一 VPC 単位の直接接続 |
| Transit VIF | Transit Gateway | TGW 配下の複数 VPC への一括接続 |
SAA 試験のポイント
Transit VIF を使うには Transit Gateway が必須 です。 VGW を使った従来構成では Private VIF しか使えません。 VGW と TGW のどちらを使うかで VIF の選択肢が変わる点を押さえましょう。
Transit Gateway の基本
Transit Gateway は 複数 VPC とオンプレミスをハブアンドスポークで接続 するルーティングハブです。
- VPC 間のピアリングを 中央集約型 に置き換え、N×(N-1)/2 の接続を O(N) に簡素化
- VPN / DX / VPC / TGW 間ピアリングをすべて TGW に集約可能
- TGW ルートテーブルで経路制御を一元管理
VPC-A VPC-B VPC-C
│ │ │
└───┬───┴───┬───┘
│ │
[Transit Gateway]
│ │
VPN DX (Transit VIF)
│ │
[オンプレミス]
SAP レベル:高度な設計シナリオ
DXGW + TGW の大規模ハイブリッド構成
SAP では数百 VPC 規模のグローバル環境を設計します。 DXGW と TGW を組み合わせた グローバルハイブリッドアーキテクチャ が定石です。
SAP レベル:高度な設計シナリオ
大規模環境では 「リージョンごとに TGW、グローバルに DXGW」 を配置します。 DXGW に Transit VIF を複数紐付け、各リージョンの TGW に接続することで、 1 本の DX 回線から全リージョンの全 VPC に到達可能になります。
[オンプレミス]
│
DX 回線 (冗長化 2本)
│
[DX Gateway (グローバル)]
│ │
Transit VIF-1 Transit VIF-2
│ │
[TGW 東京リージョン] [TGW バージニアリージョン]
│ │ │ │ │ │
VPC1 VPC2 VPC3 VPC4 VPC5 VPC6
ASN 設計と BGP 経路制御
DXGW と TGW を連携させる場合、BGP ASN の設計 が極めて重要です。 ASN の重複や不適切な設定は経路のブラックホールを引き起こします。
| 要素 | 推奨 ASN 設計 | 理由 |
|---|---|---|
| オンプレミス (CE) | プライベート ASN (64512〜65534) | 社内管理の一意性 |
| DX 回線側 | AWS 側 ASN (自動割り当てまたは指定) | DX VIF 毎に設定 |
| TGW | 一意のプライベート ASN | リージョン間重複回避 |
| DXGW | グローバル ASN | 全 Transit VIF で共有 |
ASN 重複の落とし穴
TGW と DX 側の ASN が同一だと BGP セッションが確立されません。 AWS 側 ASN は DX VIF 毎に、TGW は TGW 毎に独立した ASN を割り当てる必要があります。 この設計ミスは SAP 試験でよく問われる実務上のトラブルです。
Transit Gateway ルートテーブルのセグメンテーション
TGW は 複数のルートテーブル を持ち、アタッチメント(VPC/VPN/DX)ごとに 適用するルートテーブルを切り替えられます。これで ネットワークセグメンテーション を実現します。
TGW Route Table: "Production"
- VPC-Prod-App (propagate: yes)
- VPC-Prod-Data (propagate: yes)
- DX-Transit (propagate: yes)
→ Dev からの経路は伝播させない
TGW Route Table: "Development"
- VPC-Dev-App (propagate: yes)
- VPC-Dev-Data (propagate: yes)
→ Production への経路は伝播させない
セグメンテーションのベストプラクティス
本番と非本番は TGW ルートテーブルで分離 します。 さらに セキュリティ境界として Transit Gateway Network Manager で可視化することで、 意図しない経路伝播を検知できます。SAP ではこの分離設計が頻出します。
DXGW と TGW Peering の組み合わせ
グローバル展開の場合、リージョン間の TGW Peering と DXGW を組み合わせます。
- 同一リージョン内の VPC 間通信: TGW ルートテーブルで直接転送
- リージョン間 VPC 通信: TGW Peering 経由
- オンプレミスから全リージョン: DXGW + Transit VIF 経由
[TGW 東京] ──peering── [TGW シンガポール]
│ │
Transit VIF Transit VIF
│ │
└─────[DX Gateway]──────┘
│
[オンプレミス]
コスト上の注意
TGW Peering のリージョン間転送にはデータ転送料金が発生 します。 「オンプレミスから各リージョンへは DX 直結」「リージョン間は TGW Peering」のように トラフィックフローを意識して設計しないと、予期せぬコスト増につながります。
冗長化とフェイルオーバー
DXGW を使う構成でも、物理回線は冗長化が必須です。
| 冗長化レベル | 方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 回線冗長 | 異ロケーション 2 本の DX | ロケーション障害対応 |
| VIF 冗長 | 2 本の Transit VIF を同一 TGW に紐付け | 回線障害時の BGP 切替 |
| TGW 冗長 | リージョン内で TGW は冗長化済み (AWS 管理) | AWS 側障害対応 |
VPN バックアップの活用
DX のバックアップに Site-to-Site VPN を併用 するのが SAP のベストプラクティスです。 DX 断時に VPN へフェイルオーバーするには、BGP の AS-PATH Prepending で VPN を劣後化し、 DX 復旧時に自動で DX へ戻る設計にします。
制約と設計上の注意
- DXGW は 1 リージョンあたり 6 つの Transit VIF まで(クォータ拡張可能)
- Transit VIF は 1 つの TGW にのみ紐付け可能(複数 TGW 共有は不可)
- VGW と TGW の 混在は同一 DXGW で可能 だが、VIF 種別が分かれる
SAP レベル:高度な設計シナリオ
大規模環境では「VGW を段階的に TGW へ移行」するケースが多いです。 DXGW は VGW (Private VIF) と TGW (Transit VIF) を 同じゲートウェイに混在 できるため、 移行期間中のハイブリッド運用が可能です。この移行パスを設計できるかが SAP の論点です。
まとめ
- SAA: DXGW は DX 回線を複数 VPC で共有するグローバルハブ。Private VIF (VGW) と Transit VIF (TGW) の違いを理解する。
- SAP: DXGW + TGW によるマルチリージョン集約、ASN 設計、TGW ルートテーブルでの セグメンテーション、VPN バックアップ併用のフェイルオーバー設計が求められる。
次は AWS Site-to-Site VPN で、VPN 単体の冗長化設計と DX バックアップとしての使い方を学びましょう。