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ディザスタリカバリ 4パターン比較

AWS が定義するディザスタリカバリ 4 パターン(バックアップ・リードレプリカ・ウォームスタンバイ・マルチサイト)を RTO/RPO とコストで比較。SAA 基礎から SAP 高度設計まで解説。

最終更新: 2026-07-27 カテゴリ: 高可用性・ディザスタリカバリ

AWS はディザスタリカバリ (DR) 戦略として 4 つのパターン を定義しています。 RTO(目標復旧時間)と RPO(目標復旧時点)の要件、コスト制約から最適なパターンを選びます。 本記事では DR 4 パターンを SAA / SAP 両面から整理します。

SAA レベル:基礎概念

DR の 4 パターン概観

AWS は DR 戦略を以下の 4 パターンに分類します。

パターンRTORPOコスト特徴
1. バックアップ & 復元時間単位時間単位最低バックアップから新規構築
2. パイロットライト分〜十分リードレプリカだけ常時稼働
3. ウォームスタンバイ小規模版を常時稼働
4. マルチサイト (アクティブ・アクティブ)リアルタイムほぼ 0最高両サイト常時稼働

SAA レベル:基礎概念

DR 4 パターンの核心は 「RTO/RPO が短いほどコストが高い」 というトレードオフです。

  • バックアップ & 復元: コスト最低、復旧に時間がかかる
  • マルチサイト: リアルタイム切替、コスト最高 要件と予算のバランスで最適なパターンを選ぶのが SAA の基本判断です。

RTO と RPO の定義

指標定義意味
RTO (Recovery Time Objective)目標復旧時間障害から復旧までの許容時間
RPO (Recovery Point Objective)目標復旧時点復旧時に失っても良いデータの期間

SAA 試験のポイント

  • RTO = 「どれだけ早く復旧できるか」
  • RPO = 「どれだけ最近のデータまで復旧できるか」 この 2 つが DR 戦略の核心指標です。SAA では定義と意味を問う問題が頻出します。

パターン 1: バックアップ & 復元

最もシンプルで低コストな DR パターンです。

  • 仕組み: 定期バックアップを取得し、障害時に別リージョンで復元
  • RTO: 時間単位(バックアップからの復元時間)
  • RPO: 時間単位(最後のバックアップ以降のデータはロス)
  • コスト: バックアップ保管料金のみ
[プライマリリージョン] ──定期バックアップ── [別リージョン S3]
                                        (Glacier 等で低コスト保管)

# 障害時
[別リージョン] でバックアップから RDS / EBS / EC2 を復元 → サービス再開

SAA 頻出

バックアップ & 復元は RTO/RPO が長いがコスト最低 です。 「コスト重視、数時間の停止許容」なシナリオで選択されるパターン。 SAA では「最も低コストな DR」= バックアップ & 復元、が定番の正解です。

パターン 2: パイロットライト

DR 側にデータベースのレプリカだけ常時稼働 させるパターンです。

  • 仕組み: DB のリードレプリカを別リージョンで常時稼働、障害時に昇格 + アプリ構築
  • RTO: 分〜十分(DB 昇格 + アプリ起動)
  • RPO: 分(レプリケーション遅延分)
  • コスト: リードレプリカ料金のみ(アプリは停止)
[プライマリリージョン]
  EC2 + RDS Primary
        │ (非同期レプリケーション)

[DR リージョン]
  RDS Read Replica (常時稼働)   ← パイロットライト
  EC2 (停止、AMI だけ用意)      ← 障害時に起動

パイロットライトの特徴

「DB のレプリカだけ常時稼働、アプリは停止」 がパイロットライトの核心です。 DB 同期だけ常に走っているため RPO は分単位。障害時にアプリを起動する時間が RTO。 SAA では「コストと RTO/RPO の中間」として位置づけます。

パターン 3: ウォームスタンバイ

DR 側に小規模版の環境を常時稼働 させるパターンです。

  • 仕組み: プライマリより小さい規模のスタンバイ環境を常時稼働
  • RTO: 分(スケールアップ + トラフィック切替)
  • RPO: 秒(レプリケーション遅延分)
  • コスト: 小規模環境の常時稼働分

SAA 頻出

ウォームスタンバイは「小規模版を常時稼働」 が核心です。 障害時にスケールアップして本番規模に引き上げる。 「パイロットライトよりは常時動いている分速い、マルチサイトよりは安い」が SAA の位置づけです。

パターン 4: マルチサイト (アクティブ・アクティブ)

両リージョンを常時稼働し、トラフィックを負荷分散 するパターンです。

  • 仕組み: 両サイトで常時トラフィック処理、片側障害で他側が全トラフィック
  • RTO: リアルタイム(DNS 切替のみ)
  • RPO: ほぼ 0(双方向レプリケーション or 最終的整合性)
  • コスト: 両サイトの完全稼働 + リージョン間データ転送
[ユーザー] ── Route 53 (加重ルーティング 50/50)
              │                      │
              ▼                      ▼
     [プライマリリージョン]    [DR リージョン]
       50% トラフィック          50% トラフィック
       完全稼働                  完全稼働

SAP レベル:高度な設計シナリオ

パターン選択の判断基準

SAP では ビジネス要件とコストから DR パターンを選択 します。

SAP レベル:高度な設計シナリオ

SAP の DR パターン選択は 「ビジネスインパクト × コスト許容度」 で判断します。

  • 課金システム: 停止 = 収益ロス → マルチサイト
  • 社内向け FAQ: 数時間停止 OK → バックアップ & 復元
  • 部門別アプリ: 数十分停止許容 → ウォームスタンバイ この層別判断が SAP の核心です。
要件推奨パターン理由
RTO リアルタイム、コスト不問マルチサイト最高可用性
RTO 分単位、DB 同期重視パイロットライトDB だけ常時稼働で中コスト
RTO 分単位、アプリ常時も必要ウォームスタンバイ小規模アプリ常時稼働
RTO 数時間 OK、コスト最低バックアップ & 復元最も低コスト

Aurora Global Database によるパターン実装

Aurora Global DB は マルチリージョン DR の強力な実装手段 です。

  • レプリケーション: 通常 1 秒未満で別リージョンに複製
  • フェイルオーバー: 管理コンソール / API で数十分以内に昇格
  • RPO: 秒単位
  • 適合パターン: パイロットライト / ウォームスタンバイ

Aurora Global DB の利点

Aurora Global DB は 管理コンソール 1 クリックで昇格 できます。 通常 1 秒未満のレプリケーション遅延のため、RPO は秒単位。 SAP では「Aurora ベースのパイロットライト/ウォームスタンバイ」が DR 定石です。

DynamoDB Global Tables によるマルチサイト

DynamoDB は Global Tables でマルチサイト (アクティブ・アクティブ) を実現します。

  • 複数リージョンで読み書き: 全リージョンで Read/Write 可能
  • 最終的整合性: リージョン間は非同期複製(数秒)
  • アプリ層もマルチリージョン: 各リージョンのアプリがローカル DB にアクセス

マルチサイト時の競合解決

DynamoDB Global Tables は最終的整合性 で、同時更新の競合は「最後の書き込み勝ち」。 これを許容できるかがマルチサイト採用の前提。SAP では「競合許容性」の確認が論点です。

AWS Elastic Disaster Recovery (DRS)

AWS DRS は EC2 / オンプレミスサーバーを別リージョンに継続レプリケートするサービスです。

  • ブロックレベルレプリケート: ディスク全体を継続複製
  • RPO: 数秒〜分
  • RTO: 数分(復旧インスタンス起動)
  • 適合: パイロットライト相当、低コスト実現

DRS の活用場面

DRS は「既存の EC2 / オンプレを別リージョンに低成本で DR」したい場面で強力です。 従来の CloudEndure を統合したサービスで、設定がシンプル。 SAP では「EC2 ベースアプリの低成本 DR」として DRS が頻出します。

Route 53 による DR フェイルオーバー

DR パターン共通で Route 53 のフェイルオーバールーティング が使われます。

ルーティングポリシー用途設計論点
フェイルオーバープライマリ→セカンダリ切替ヘルスチェック必須
加重ルーティングマルチサイトの負荷分散重みで段階切替も可能
レイテンシルーティング最小レイテンシへ誘導マルチサイトの性能最適化

Route 53 ヘルスチェックの設計

DR 切替の鍵は Route 53 ヘルスチェックの閾値設計 です。 「1 回失敗で切替」は誤検知リスクが高く、「10 回失敗で切替」は RTO が延びる。 SAP では「連続 N 回失敗」のチューニングが運用論点です。

バックアップ & 復元の最適化

最も低コストなパターンでも、設計次第で RTO/RPO を改善できます。

手法効果実装
バックアップ頻度増RPO 短縮AWS Backup で頻度設定
クロスリージョンコピーDR リージョンに自動複製AWS Backup のクロスリージョン
事前復元テストRTO 短縮定期 DR 訓練で手順最適化
IaC による迅速構築RTO 短縮CloudFormation / Terraform

バックアップ & 復元の落とし穴

「バックアップは取っているが復元テストをしていない」 が最も危険です。 いざという時に「復元に想定以上の時間がかかる」「手順に不備」が発覚します。 SAP では定期 DR 訓練(最低半年に 1 回)がコンプライアンス要件化されることも多いです。

コスト比較と層別設計

4 パターンの概算コスト比較(プライマリ環境 = 1.0 とした場合):

パターンDR 側コスト総コストRTORPO
バックアップ & 復元0.05〜0.11.05〜1.1時間時間
パイロットライト0.2〜0.31.2〜1.3分〜十分
ウォームスタンバイ0.5〜0.71.5〜1.7
マルチサイト1.02.0+リアルタイムほぼ 0

SAP レベル:高度な設計シナリオ

SAP の DR 設計定石は 「アプリを層別し、パターンを適材適所」 です。

  • 収益直結アプリ: マルチサイト
  • 業務要: ウォームスタンバイ
  • 一般: パイロットライト
  • 非クリティカル: バックアップ & 復元 「全アプリ同じパターン」は過剰投資か過小投資のどちらかに偏るため、層別が必須です。

制約と考慮事項

項目制約 / 注意
Aurora Global DB通常 1 秒未満レプリケーション
DynamoDB Global Table数秒の最終的整合性
DRSEC2 / オンプレ対応、コンテナは別途
Route 53 フェイルオーバーDNS キャッシュの影響

まとめ

  • SAA: DR 4 パターン(バックアップ/パイロットライト/ウォームスタンバイ/マルチサイト)の 特徴と RTO/RPO/コストの関係、RTO/RPO の定義を理解する。
  • SAP: パターン選択の判断基準、Aurora Global DB / DynamoDB Global Tables / DRS の実装、 Route 53 フェイルオーバー設計、層別設計が求められる。

次は AWS Elastic Disaster Recovery (DRS) で、DRS の詳細設計を深掘りします。

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